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東京家庭裁判所 昭和39年(家イ)700号 審判

国籍 マレーシア 住所 東京都

申立人 レイ・ケトナ(仮名)

国籍 日本 住所 東京都

相手方 戸口良子(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

申立人は、相手方に対し包括的離婚給付としての財産分与として金一〇〇万円の支払をせよ。

理由

申立人の登録済証明書、相手方の戸籍謄本および家庭裁判所調査官石塚文子の調査報告書によると、申立人はシンガポールより私費留学生として昭和三四年一〇月来日し、○○大学○○学部○○学科に入学し、昭和三九年三月同校を卒業したマレーシア国籍(元イギリス国籍を有したが、シンガポールとマレーシアとの併合に伴い昭和三八年九月一六日以降マレーシア国籍を取得)を有する者であるが、昭和三五年七月四日日本国籍を有する相手方と適法な婚姻をなし同日東京都渋谷区長に対して婚姻の届出を了し、(同月一六日英国大使館領事部において挙式)東京都内において夫婦生活を始めたことが認められる。

よつて、当事者の一方である相手方が日本国籍を有する本件離婚については、日本の裁判所が裁判管轄権を有するが、その準拠法については法例第一六条によると離婚原因発生当時の夫の本国法によることになる。ところが夫である申立人の離婚原因発生当時の本国法であるイギリスの国際私法原則によると当事者の双方または一方が住所を有する地(法廷地)の法律を適用すべきものと解されるから、本件については法例第二九条により結局日本の法律が適用されることになる。

そこで本件調停の経過並びに家庭裁判所調査官石塚文子の調査報告書によると、申立人と相手方とは婚姻後しばらくは夫婦仲が円満であつたが、昭和三六年申立人が相手方とともにシンガポールに一時帰郷した頃から相手方との仲がとかく円満を欠くに至り、とくに昭和三八年四月頃から、申立人と他の女性との関係をめぐつて、申立人と相手方との仲は険悪となり、昭和三八年終頃には夫婦間は破たん状態となつていたこと、当事者双方とも離婚はやむを得ないと考えておるが、包括的離婚給付としての財産分与の額について申立人は最高金一〇〇万円を主張するに対し、相手方は最低金二〇〇万円を主張しており、しかも相手方は第一回調停期日に出頭したのみでその後の調停期日に出頭せず調停における離婚の合意は成立しなかつたことを、それぞれ認めることができる。

当裁判所は、上記認定の事実その他諸般の事情を考慮し、本件については、家事審判法第二四条の調停に代わる審判によつて当事者双方を離婚させ、かつ、申立人は相手方に対し包括的離婚給付としての財産分与として金一〇〇万円の支払をすることが相当であると認め、調停委員西方潔、同林タカの意見をきいたうえ、主文のとおり審判する次第である。

(家事審判官 沼辺愛一)

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